しょう。
二十八日
こんにちは。ちっともお早うではございません、もう十二時五分前よ。勿論只今御起床というのではなくて、きのう咲が立つので大乱脈のままになっていた台所を一時間ほどまとめて働き、その前に小鳥の世話、犬の御飯、胡瓜とニラの芽の見物をしたわけです。
いつもこうなのよ、咲が来ると実にゴタつき、帰って国がいなくなると、私は長大息をついて次の朝なかなか腰があがりません。可笑しいのね、主婦が帰れば却ってよく片づいて単純になりそうなものなのに、決してそうゆきません。国はわたしとの暮しではいろいろ辛棒して書生っぽにしているから、愛妻御帰館で、気持の要求がぐっと殖えるのでしょうね、食事にしろね。それに咲の来ている気分にしろ、察しのつくところもあるわけでしょう、だから何だかごたごたになってしまうのよ。わたしだったら、と思うから、ごたつきについては敬意を表しておくの。だって、そうでしょう? 眼が一つのものからはなれやしないでしょうと思います。オヤ、見なくては。おひると朝けんたいの、メリケンコの妙なものをやいているのよ、ストーヴのところのガスで。こうやって書き乍らやくと急がないから、きっとよ
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