は、と笑止でしょう? でも、マア。相談というのでもないけれど。
ここまで書いたら電話のベルが鳴りました。寿。長者町に、やっと永住出来そうな家がありそうになったら、別の借手が現れて怪しくなったので、九段の家主まで来た由です。お米が足りなくてキャベジたべて、気分わるい程とのことです、どこも同じね。弁当にお握りをもって来て、寿は其をたべ、わたしはパフパフをたべ。ホットケークの悲しき同族は、たべるときまことに空気が多くて、パフパフいうようだから、わたし一流の名づけ術で、パフパフと申します。名だけきくと美味しそうだと大笑いです。
四方山《よもやま》の話をして六時頃寿引上げかけたら、酒やで福神漬を売るから月番よろしくとのことで、わたしは日のかげったときゆっくり畑いじりしてみようと思っていたのに、其ではと大鍋をもって寿送りかたがた出かけました。団子坂上なのよ。行ったら各戸なのだって。組長の女中さん、時刻が時刻なのでちょいとよろしく計らったのね、それが通用せず、というわけだったのでしょう。
帰ってから、寿サービスの片づけをして、自分の夕飯たべたら、又もうこんな時間。九時です。明朝の御飯は今晩炊きましょうという二十八日ですから、今炊いて居ります。夜あけに起きて警戒しましょう、というのはどういうことをするのでしょうね
きのうは朝公共防空壕の修繕を隣組でやりました、国がオバーオール着て、鉢巻きして出ました。わたしは台所するとき、薄緑の布で髪をつつむのが好きで、これは灰で髪をよごさない実効がありますが、鉢巻は気分ものね、てっぺんの薄いところもまる出しだし、まさか頭の鉢が、あの手拭一本でしまるほど、それほどたががゆるんでも居りますまい。国は身なりも極端ね、この間は咲の迎に、ハッピ着てゆきました。「目黒のさんま」(落語)のくちね、殿様の御微行は、いつも下賤におなりです。実直な働く人々が、自分の身分に謙遜して、ちゃんとしてなくては失礼と思う反対ね。
きょうの二人遊びは、右のようなわけで肝心の午後が潰れてしまって、まことに残念でした。先週は国ずっといて、咲が来て大バタバタだったから、今日はほんとに待ちかねていたのに。でも、寿はよろこんで休んで帰ったから、あなたも計らぬ功徳をおほどこしになったわけです。寿も一人きりの生活は、食事の一人のことなどつまらないようです。あのひとも十二月から大変だ
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