ととうけただけの癖で、それが変った事情のなかに移っても私にのこって、あなたにとって笑止な遠慮、卑屈さになったと思います。平常はそれをそちらの分の土台としてやっていて、一昨年の十二月から昨年八月までは、実業之日本、筑摩書店から印税の前借をしたのと、十三年に翻訳したその収入と合わせ、やりくりました。もう何ヵ月ぶんしかないというのは事実であったわけです。寿江子はそういうやりかたに馴れないものだから、私もかなり語調でおどかされたりしましたが。
八月末医者の払いをしたら、それこれがおてっぱらいとなり、国男さんの方の事情としては月々医療費を立て替えることも困難だというから、いろいろ考えた末、百ヶだけ担保として、それで流通をつけてゆくうちに、私の体もいくらかましとなって、少しの収入があればよしということにしました。
あなたにもすっかりわかっていることでなかったのは悪うございました。しかし、ともかくもこうやって最も体も弱った時期を何とかきりまわして行けたのはよかったと思って居ります。
ここまで書いたら一日づけのお手紙が来ました。そしてこの前、あなたの不自由なさった前後のことがあるので補足いたしま
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