て考えることが出来ず、私のためは即ちあなたのためとは思えず、数々不快な問答がくりかえされました。あの節建築の方は今日のような統制による窮迫をうけていなかったから、私の不自由も我が身からの酔狂と見ていました。私はつくづく不安心で、自分がいなくなりでもしたら、二人はどんな思いをすることかと思い、そのために全く些少の足場だが一方だけ即刻処分は出来ませんでした。そのことをすっかりあなたにお話しすべきでした。ところが、あのときは、生活の態度という点で、一つもあまさずというお話で、それは私にあなたがこまかいいやな事情を御存知ないからだと思えました。一々そんなことを話しても、私が感情的になっているか、さもなければ自分の何かつかまるものがないと心細いという習慣風な気分の理屈づけとおききになるだろうと思えました。おそらくそんな印象をおうけになり、そんな風にとれるようにおっしゃったことがあったのは、寧ろ私が簡明に生活の条件をお話ししなかったからのことであったでしょう。
私たちは家事的な話しなどをゆっくり永年相談しあって暮して来たというのではなくて、そういう話があなたから出たときは、私にとって何か絶対のこ
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