をするとき、そこから静安だけを求めて、どこへか行きたいという気はありません。まして動けるのは一人だという場合。自分だけがどこかに行くということを考えると寧ろ渋ってしまうのよ。しかし、ここでの生活は、なかなか複雑で、私の神経が相当いためられます。寿江子という人は大変特別だから、私がこの二三日のように工合わるくして床にいたりするときは優しく親切だが、すこし元気よくなっているときは実に鋭い反撥を示し、癒ってゆくもの、そして着々仕事も進みそうな者への反感をきわめて意地わるく示します、自分は決して快癒はしない病をもって生きているのが重荷なのだ、ということで。こんなに大筋をかいても一寸おわかりになりにくいでしょうし、又いい気持もなさらないでしょうが、それは冷熱こもごもの感じで、まだすっかり丈夫になっていない私には苦しいことなの。咲枝が腎臓をわるくしていて(泰子の過労から)先日も伊豆の温泉にゆき、明後日ごろから国府津へ子供づれでゆきます。自然太郎の責任は私が負うこととなり、お産の留守番以来かなりもう沢山にもなっています。私は今迄は動きたくても駄目だったから。こうしていて月々にかかっている費用にいくら
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