資材関係その他ですが、そちらも御自分用の防毒面はおありになろうとも思えません。うちにもありません。子供用のものは土台ないそうです。黄燐焼夷弾の煙は、十分位は人体に害なし、だそうですが、重曹のとかした液を浸した手拭いを口にあてておくと、幾分粘膜の傷つくことを防げるそうですが、その重曹が手に入りにくうございます。塩の濃い溶液にタオルのようなものを浸し、それをよくしませて、口、鼻にあて、眼をよくつぶっていれば何もしないよりはましでしょう。燐の煙は猫いらず的作用ですから、困るわね。
 今年は夏になっても、冬用の夜具類を手許に置いていただきましょう。ガラスの飛び散るのやいろいろは厚い夜具をかぶればいくらかいいし、煙も掛布団の裾がたたみに密着するように、しかも空気がなるたけあるように、ふところを大きくしてかぶれば、むきだしよりもいいでしょう。
 冬のかかりになって、あまり寒くならないうちとり変えるものは変えましょう。
 シーツはそちらに代りがあるでしょうか。いずれ、一枚お送りいたします。シーツが大変なのよ、なくて。
 取越し苦労とお笑いになるかも知れないけれども、備えあれば憂なし、と、あなたが教え
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