ところのことを思えばよほど様子はのんびりしていらっしゃいますが、達ちゃんはいつ留守になるかしれず、隆ちゃんはいず、トラックの方も変化するというきょうの様では、お母さんも友ちゃんや輝をひかえ、決してお気持にゆとりはありますまい。生活をこれ迄たたかって来てやっと少しはのんびり出来るかと思うと、というのがお年を召した方のお気持であろうと深くお察し申します。
 さもなければ昨年から今までにあなたの方へ何とか実際的なこともあったかもしれず、私たちとしては、私たちが二十代でもなくなったのにと、やはり悲しいお気がするでしょう。だから、私が埃立てていて可哀そうとお思いにならなくていいわ。誰だって今日、埃っぽいのよ。借金暮しよ。そんなこともキューキューやりくって見て、智慧もしぼって、しかし人生はやっぱりそのほかのところに人一人生きたというねうちが在るのだと、益※[#二の字点、1−2−22]しみじみわかって、人間にうま味もユーモアもついて来るのでしょう。下らない苦労だと云ってしないですむものなら、代々の人間が何のために生きたのか分らないような苦労をつづけて生涯をこんなに綿々とつづけて来てもいないでしょうも
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