っても気持のきれいな男が、唾をはきかけることも分ります。バルザックは妹に、小説の原稿をよんで貰い、文章に手を入れさせ――溢れるところに、土堤をこしらえさせました。その妹に、すごい別嬪だよ、というような語調でハンスカ夫人のことなどうちあけているのよ。
バルザックのねうちが分るためには、人間鑑識の目がよほどリアリスティックに高められなければなりませんね。羽織の紐をブラリブラリと悠々たらして、奴凧のように出現する無比の好漢は、エティケットを云々する文化女史にとって、どんなに大ざっぱで可怪しい工合に見えることでしょう。ロダンはバルザックをあの有名な仕事着《ガウン》姿で、ロダンらしく、すこし凄みすぎて甘みぬきにしすぎて居ると思います。バルザックはああいう英雄ではないわ(ロダンのバルザック記念像の形、覚えていらっしゃるでしょう? あのヌーとした。巖のような)ぼってりして肉厚な体で、テレリとしたところもある口元の、シャボテンで云えば厚肉種です、汁の多いたちよ。余りまじり気なく男で、女性の影響なしにいられなかった、そういう男です。
炬燵に入って、こんな話を次から次へしたとしたら、どうでしょう。とこ
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