などが、今日の人々の日常では想像の出来ない悪業に平気だったということは分ります。ツワイクの時代の空気は理性的です。バルザックの空気には毒素となって当時が尾をひいていて、バルザックはその中でフーシェなんかをグーッとつかんでいるのね。バルザックという作家は、フランスの鼻もちならぬ塵塚、塵芥堀の中から、のたうって芽を出した大南瓜ね。まあその蔓の太いこと、剛毛のひどいこと、青臭いこと! その実の大きくて赤くて、肉が厚くて、美味で一寸泥くさいことと云ったら! 人間が喰われてしまいそうな化物南瓜ね。痛快至極の怪物です。ユーゴーの通俗性とはちがった巨大さです。ユーゴーは、とんまや道学者にも分る立派さです、ゲーテ同様。小にしては藤村の如く。バルザックは偉大さとお人よしと博大さと俗っぽさと、すべてが男らしくて、横溢していて、強壮で成熟して、物怯じしない人間だけにうけいれられるいきものです。バルザックは、手がぬるりと滑るほど膏ぎっていて、それが気味わるいということはあっても、きたないと云う人物ではありません。野卑だが劣等でないというような表現もあり得るものなのですね。そして、上品できたない人間に、野卑であ
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