丁度山脈のこちら側の終点をなすウラジカウカアズという町に夜つきました。ホテルは今時珍しい瓦斯燈で、あおい水の中に入ったようなガランとしたホールのところにいたら、フェーディンという作家が来合わせ、明日自分も越すが同行しないか、自動車は六人のりだというのよ。同意して朝玄関へ出たら四人と二人のりとが来ていて、フェーディンの女房が、四人の自分の仲間がわれるのをいやがってゴネるの。すると亭主はさすがに「だってあの人たちは女だよ」と小声でたしなめているのよ、きこえないか分らないと思って。私は大いに不愉快で、このメン鳥の横にのりました。段々山にかかってテレク河をさかのぼり、トルストイが「然しかの山々は」というリズミカルなリフレインで「コーカサス」を描き出したそのテレクをなつかしく眺めて山にさしかかりました。壮大な展望がはじまります。するとフェーディンが「素晴らしい!」と歎息しました。「トルストイ、レルモントフがコーカサスについては書いてしまった」すると女房が紅をつけた唇を動かして一言「やって御覧なさいよ」パプローヴィチェと云うの。私はフェーディンの歎息も女房のはげましもいかにも三文文士くさくて苦笑し
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