ことの出来ないほど微かな生成をつづけながら、名状しがたい美しい無我で花びらを呼吸とともに収縮させ、そして弛緩させます。収縮させ、弛緩させます。
太陽は、花のその息づきに、いつか自身の光波を合わせて息づいている自分に心づいて更に更に愕きました。
太陽は朝ごとに甦えり、死も老いも知りません。そういうものを知らぬ自分というものを知ってから、もうどれだけの時が経ったでしょう。今、花の収縮のなかにおちそうになった自分を感じ、太陽は、自分が今若くあるよりももっと前にあった自分の熱さを計らず思いおこしました。人間が生きていられるだけの熱さに、おだやかなるあつさにもなることを覚えてから、経た年月を太陽は思いかえさずにはいられませんでした。悲しみと歓びの不思議な波が太陽を夢中にさせました。太陽は我を忘れて、瞬間太古の熱さにかえりました。そして、灼き燃えたつ光の珠となって、その花びらの軟くきついしめつけの中におちて行きました。
異教《ペガン》の歌《ソング》というのは、どういう物語をさしていうのでしょう。ギリシア人は、太陽を決して花びらの間におちる神だとは思っていませんでした。信心ぶかく伏目がちなイエ
前へ
次へ
全440ページ中343ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング