つかったからもあるのよ。今、小さいお産を一つしたようなところで、おとなしくなって少しくたびれて、一休みして、気をおちつけて、やがて仕事にとりかかります。
今年のお誕生日は、何をさし上げようかと思っていたのよ。去年は眼もろくに見えず、字もかけず、頭は妙で、その代り一世一代に献詩いたしました。今年は正気でしょう? 詩も出来ないし。そしたら計らず、こういう扉を一つ廻転させまして、あなたならこれをもおくりものとして十分うけとって下さると存じます。本質的にはああいう詩の十篇より永もちのする値うちがこもって居ります。何故ならこういう力のいる一生に何度という扉のあけたては、気が合って、四つの手の気合いがそろって、じり押しに押した揚句くるりと展開するのですから。お祝いにわたしは小説のプランをさしあげようと思います。
十月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
十月四日 つづき
一人の作家のなかにある、作家とモラリストとの関係は、いろいろ興味ふかく且つ本質にふれた問題ですね。芸術の向上の歴史がそこに語られても居るようです。この間いろいろ考えているとき、芥川の「或る日の馬琴」を思い
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