年の二月十三日には、そちらではパイナップルの鑵を開けて、私の誕生日をお祝い下さったそうですが、今年は何の鑵があったのでしょう。みんなのなかで暮しているからと、御放念だったでしょうか。いずれにせよ私は、あなたから色々のお祝を戴きためてあるから、その日になってにわかにがっつくこともありません。
十三日は、生れて始めてこんな風に誕生日を祝ってもらったとびっくりするようにしてくれました。
お客様の数は、目白のお医者夫妻とペンさんと位のものでしたが、食堂のテーブルは珍しく白いテーブルクロースに覆われて、その真中には菜の花や、マーガレットが撒かれ、食器台の上には桃色の飾り笠をつけた燭台が二つ立っていて、これまた珍しく緑色のお酒の入れられた切子《キリコ》の瓶が立って、それはお祝の鐘の鳴る小さい鐘楼のようでした。真中の所に私の椅子がおいてあって、其処に贈物が積んでありました。この頃みんなでして遊ぶダイヤモンドゲームを太郎から。面白い染の袋があって、その上の箱を開けたら、内から気の利いた切符入れと、綺麗な羽織の紐と、からたちの模様のテーブル・センター。さらにいじらしいことには、小さい小さいのし紙を胸
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