光としてうけとれるように営まれていることは、どんなに感謝すべきであるかと。独力の可能の限界がわかっているからこそ。よくて。ここに小説家としての私が小さな盆からこぼれるところがあるのよ。小説は新しくならねばならず、古い小説の世界から私は彗《スイ》星となっている自分を感じます。彗星は凶兆ではなくて、ケプラーによれば、科学的に測定されるべきものであります。
九月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
九月二十日
世の中には意外なこともあるものね、と申しても実例は、あなたがお笑い出しになることですが、ケプラーが生れた翌る年バルソロミウの虐殺を組織したフランスのカザリン・ド・メディチ(一五一九―一五八九)が、近代のバレー(舞踊)演技の最初の組立て人だという事実があります。謂わばあの時代の最も陰険な最も暗殺をこのんだこの女王が肉体と精神の高揚を芸術化するために一役買ったというのは不思議です。デュマはカザリン・ド・メディチという、彼らしい小説をかいていて、昔よみ、フランス宮廷というところのおそろしさを感じたものでした。メディチはルネッサンスの巨匠たちに仕事をさせた家で、その家
前へ
次へ
全440ページ中308ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング