て、そこから猛烈に蚊がわくので、その戦いにいろんな薬を試み、ちっとも成功しなかったのに、やっと硫黄の薬(温泉の湯ばな)を見つけて、まいて見たというわけです。昨夜、国男一ヵ月ぶりに帰京しました。東京のじっとり暑いのに参ると云って、きょうは長い顔をしておとなしゅうございます。
 その後いかがでしょう、熱はずっと落付いて居りますか。すこしは味がわかって召上れますか。眠れればよいが、と思います。体のよくないときの夜は何と明けるのが待ち遠しいでしょう。特に夏なんか。ひとの寝息をきき乍ら起きているのは苦しいことね、去年経験いたしましたが。一緒におきている人がいたらたのしかろうと思うことね。そういうとき。
 私は眼の方は「異状なしで」時を待たねばならず、ということでわかりましたが、すこし尿が妙で、きょうお医者に相談いたします。疲れのせいと思っていたが、疲れが、こんなに眠っても軽快にならず、尿はまるで糠《ぬか》味噌を水にあけたような工合だから変ね。しかし悪性の腎《ジン》臓は目に出ますから眼底をあんなに検査してどうもなかったのだから、私のこんな疲れかたもやはり「不正型」かもしれないわ、新型の、ね。いずれ
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