私に御同感でしょう? 好ちゃんという人物は相当なものですから、自分の腕のなかにゆったりといづみ子を抱括していて、一寸した彼女の身じろぎだってそれはみんなちゃんと感じとられ応えられているのだわ。いづみ子の表現は、計らず、彼女の愛くるしい慾ばりぶりを率直に示して居て面白く思われます)
いずれ好ちゃんもたよりよこしましょう。私の方へよりもあなたのところへ書くかもしれないわね、その方が自然でしょうからね。幼な馴染などというものは、世間では惰性的結合になって新鮮さを失いがちですが、あの二人は全然ちがって、二人で感情に目ざめ、育て合い、日々新なりという工合らしいから、つまりは一組の天才たちなのかもしれないわ。昔のひとが良人は天、妻は地なりと云うことを申しましたが、そういう宇宙的献身の見事さや潤沢さは、むしろディオニソス風の色彩のゆたかさで、しかも近代の精神の明るさに貫かれ、全然新種の人間歓喜の一典型でしょう。私も小説家に生れたからには、あますところなくそういう美しさ、よろこび、光について描きたいことね。そういう美は、そのものとして切りはなされて在るのではなくて、全生活行動の強大な脈うつリズムとと
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