からして、ね。もうこれがしまいで、段々恢復の条件がととのったら順調によくなって行らっしゃることでしょう。みんなびっくりして、呉々お大事とのことです。栄さんや何か。
けさはね、すこしのんびりとした手紙をかくのよ、いづみ子の近況などについて。いづみ子も近頃はもう全く一人前の淑女で、ぽっちりと鮮やかな顔色や柔軟でしかもいかにも弾力のこもった全身の動きや、なかなかみごとな存在となりました。あれの特徴であった何となし稚気なところもそのままながら、どこか靭さをまして豊醇です。そしたらね、つい近頃短いたよりをよこして、ごく内輪な表現ですけれども、どうしても好ちゃんのほかに旦那さんはないと心を決めたらしい風です。今時の女の子に似合わず、大変含みのある表現でそれを云って居りますが、そのために却って心の一途さがくみとれます。それはあの二人はどうせ切ってもきれない仲だけれども、いづみ子は次第に目ざめる深い女の心でひとしおそのことをつよく感じ、自分たちの結びつきの又となさについて感銘している様子です。好ちゃんは、あのこのつい近所までよく行くことがあるらしいのよ。でも御存知のとおり兵隊さんでしょう? 時間があ
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