のではありませんけれども、久しぶりの夕立で、気が休まるようです。この二三日は蒸しかたが一通りでありませんでした。かなり干上ったところへ雨でいい心持です。開成山の方へも降っているかしら。去年の今夕は、国男の誕生日というので、私がやっとテーブルに向って坐ったが二くちほどでへばって臥てやしなって貰いました。
八月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(八千代橋畔の秋色〈箱根〉の写真絵はがき)〕
八月十二日、今夜は何と涼しく、体が楽でしょう。七十八度よ。雨にぬれた屋根の瓦に、月がさして居ります。もうこんな夜も折々はあるようになったのね。立秋ということにはやはりたしかな季節のしらせがあります、朝顔の花の色が美しく目についてそれも微妙な二つの季節のしるしのようです。
八月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(江の島の写真絵はがき)〕
八月十三日、きょうはほんとに、ほんとに愕《おどろ》いて、安心したら骨が抜けたようになりました。お話のようにとりはからいます。ねまきお送りいたします、とりすてになってかまわない分です。
手拭も一本お送りします、スフ交りのですが。暑いところじっ
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