私のようなものによくわけがわかりません。
 イリーンの『山と人間』ありました。今にお送りいたしましょう。シートンのあとはいかが? もうブランカのばかさ、いじらしさがわかったから、御用なし?
 石鹸のこと御免なさい、そちらで都合つけて頂いたりして。しかし大いに助かります。全くナイものなのよ。只今これと一緒にシーツ、タオル、メタボリンお送りいたします。シーツもシャボンの仲間、ないものの一つです。きれたのを送りかえして下さいまし。ついで私のにして、私のをそちらにまわします。でも今に、浴衣のほぐしたのがシーツになることでしょう。
 ああやって天井見て臥ていらして御退屈でしょう。一つ音楽をおきかせいたします。千代紙の中から琴を弾じる唐子《カラコ》一人つかわします。松の樹の下、涼しい石の上で、この男児は琴をならし、その音をもってあなたに一吹きの涼風をお送りするでしょう。(支那の人はこういうときうまい文句を見つけますね。)

 八月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(Fishing Village, Paslr Panjang S. S. の写真絵はがき)〕

 八月十二日。沛然という勇壮な
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