のスエコは、何の虫のかげんか「駒」の字が好きでないんですって。意味が判らないのよ、何故だか。(筆者註、アッコオバチャンは口だけ達者で困りますヨ!)まさか前の通りに床几を持出すわけにも行かないからこれはお流れね。
碁なら、女の人で哲学者の奥さんで先生がありますが、いかに暇潰しに困っても白と黒の石をパチリとやる趣味はまだ無くてね。ピアノを弾けばいいようなものの、音がまだ強過ぎるし第一、ああしてガンと黒く光って構えているものと向い合うのも気おっくうだし、私が全く子供のピアノでも今の譜を見る速力よりは指の方がまだ早いから、これもだめ。おかしいでしょう。色々な時期に、色々困ったことが起って来て。疲れ工合に注意してみると、私はまだ1/3人前です。一人前になる迄にはたっぷり今年一杯はかかりますね。ポチポチと短い文章を書き、詩のような物も書き、それがやがて一冊の本にでもなるだけの収穫があれば、こんな時期も私は怠惰ではなかったと云うものでしょう。それに就てはあなたに云いたいお礼も沢山あります。すえ子もそんなものを読むときには一廉《ひとかど》のつら構えで、これはいいとか、左程でないとか、これはちゃんとし
前へ
次へ
全440ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング