らじかにお送り出来るようになりました。『市民の科学』(ホグベン)そちらへ一緒に行ったようです、もしおよみになればよし、さもなくばいつかお返し頂きましょう。『文芸春秋』はまだうまく運びません。シャボン又送ります。八月六日

 八月六日夕 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 八月六日 夕刻
 さっきお手紙頂きました。このお手紙は干天の雨でした。何だかそちらの御様子がよくのみこめなくて、次第次第に心配になって来て、段々私の目つきがよくなくなりつつありました。あなたとしては熱の低くない方で、周囲に流行している関係上、様子を見る方がよいというわけであったことがはっきりいたし、安心しました。そちらへ行ったのは二十八日(金)でした。八度二分も出たという日でしたから、尤もなことでした。
 森長さんはすこし熱が下ったときだったわけね。こちらから電話したのでしたが、あのひとも親切にことづけのこときいたりしてくれても、直接私が心配を話す時には、そんなこと一言も云わず、私の心配もピンとしないような物の云いかたで、そこが又あの人の好いところとも云えるのでしょうが。でも、このお手紙で、私はどんなに安
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