ますものね。
「マリー・アントワネット」のなかでつよく印象されたことは、マリーを最後迄助けようとしたスウェーデンの貴族があり、それはマリーの愛情をも蒙った人ですが、おどろくべき大胆と周到さとでルイ一家の逃亡を計画しながら、マリーに出来るだけヴェルサイユですごしていた便宜さを失わせまいとして、その男は特別製の馬車やトランクやをこしらえ、そのために、やっと逃げて行ったのにつかまってしまったことです。貴族が自分の貴族らしさを、こうもすてきれないかとおどろき賢人の愚行に打たれました。ストリンドベリーやニイチェやその他西洋のすこし辛子《カラシ》のきいた男が、女性というものに何となし、おぞけをふるったのも尤だと思います。ショーペンハーウェルにしろ。日本の女は素朴な社会での在りようそのまま、あんまりキノコみたいであるかもしれないが、それだけ自然さや醇朴さをも保ったところもあります。女でも西洋の女には、へきえきするところがあります。
さて、昔のタイプライタアの紙もいよいよこれでおしまいよ。この次からは、私が昔ロシア語のタイプをうったとき使った紙ののこりとなります。これよりわるい紙。
土蔵に、浮世絵
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