度とかえらぬギリシア時代[#「二度とかえらぬギリシア時代」に傍点]よ。ですから、私を哀れと思い、どうぞ現状維持を最低のレベルとしてお願いいたします。おっしゃったキロね、換算したら相当のものでした。十五キロが四貫でしょう? だからね。その位ならブランカにふさわしきというところでしょう。
昨夜月が皎々と輝いているのに青桐の葉をそよがせて白く雨が降っているときがありました。お気がついたでしょうか、もう割合おそかったから眠っていらしたかしら。私は、眠れる筈だしいい心持だのに、眠れず、白い蚊帖が風に微かにゆらめくなかで、その月と雨とを眺めながら横になって居りました。風にゆらめく蚊帳というものは大変抒情的よ。心も一緒に風にゆれます。うれしいやさしいゆらめきもあるし、心配なときは、かすかにふくらんだりしぼんだりしているのを見ていると、あはれ、わが愁にも似たるかな、という風でもあります。
八月一・二日とおっしゃったとき、何だかあぶなっかしかったのを、暦みたら、土、日、よ。虫が告げたのでした。そうすると、三十一日か四日ね。三十一日になりそうです。
きのう、いろいろのことお話する間がなくなってしまっ
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