え、何しろ弱い人だから夏頃の工合の悪さから見て無事にすむかどうか誰しも不安だったので丁度私が回復し始めるころから十一月にかけどうしても気が張っていて私は力以上の緊張が続きました。咲枝が留守のこともあなたがお考えになるように我から買って出た役でもなかったのです。ここの父親は子煩悩だけれども遊び仲間で、死に騒ぎにならなければ夜子供をみるというような世間並みの習慣はなく、亭主教育されているから咲枝としては私にでも頼むしかなかったのでしょう。全責任を一人で負う女中さんというものはあり得ませんし。
どうやらやっとそのお産のゴタゴタもすみ咲枝の体も順調で全く一安心です。泰子が生きると決ってから私は全く体中の力みをゆるめて夏以来始めてクタクタになり十三四時間も眠ります。相当なものでしょう。うちの人達も私に無理をさせていたことが必要がすんでみればはっきりわかってきて今は休むことを頼まれ私はいい身分よ。何しろ呑気にしてさえいれば安心だというのですからね。
今の調子で春までのんびりしたら眼もよほどいいでしょう。伊東へ行くことなども考えていたけれどもあすこは防空地帯の甲で、これからは東から西への気流がよ
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