匂いをつけます。ロボーは泣きながらブランカの匂いをさがして来て終にそのワナにかかります。シートンはさすがに首を〆めてしまえないで、そのままワナからはずして縛っておいたところ、自分の君臨していた荒野を見守ったままロボーは人間を見向きもせず、王らしい終りをとげます。シートンはロボーの顔をスケッチして、その日にデューラーの版画みたいに王冠をのせ、RoBo 何とかラテン語書いていますが、このシートンという男はアメリカ人らしい生活ぶりで、或地方の賞金つきの野獣狩りなんかにも出るのね、ロボーには一千ポンドの賞金がついていたのですって。
 私はシートンの話はいつも面白いが、こいつはきらいで悲しいわ。ロボーのために悲しみます。そして一層ブランカのために身につまされます。こんな賢い野獣でさえ、その智慧の最上の点で牡に及ばないという自然のしわざを悲しみます。ブランカは好奇心がつよくてロボーが止れと命じて一群が皆止ってもチョコチョコロボーの先へ出たり横へ走ったりして悲劇を招くのよ。ブランカのひっかかったのはロボーがちゃんと警告する本道の上のワナではなくて、わきの草むらに何気なくころがされていた牛の頭の一つで
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