ます。私の体も今年のうちにしっかりさせておかないと、来年は今より薬も食物も不自由になることは明らかですから。眼も特別な場合にはこの位のものがこうしてかける(これだけよ、でも、こんなにかけるのは)し、新聞は駄目でも八ポイントぐらいの本は、五号の活字でなくてもたまによめるようになりましたし、そういう能力は、ふだんの四分ぐらい迄戻りました。こんなにして、不自由ながらいつの間にか一年もしてこの頃は楽になったと思うのかもしれないことね。段々、家康ではないが、不自由を常と思えば、のことになって来るのは生活の微妙なところです。必要にひっぱられて何とかやるようになるところ。鉛筆で小説かいたりして全くびっくりします。これもいいことよ。微熱の出るようなこともないし、根本的な心配はございません。
 この前行ったときは、前日外出した翌日だったからほんとうに疲れていたの。翌日に出かけるような心持だから、動悸だってひどかったし、口をしめているのが無理ぐらいで、おそらくはれぼったい顔していましたでしょう。出かける方はやめられないし、今の組み合せでつづける方が、私として前のコンビとは比較にならない好都合です。この人は
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