ででもありましょう。では又あしたね。久しぶりに湯上りでいい気持。日曜の夜咲、国、子供三人その他二人の一連隊がかえって来て一週間ほどいるそうです。
六月十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
六月九日
きょうはむしあつい膏汗《あぶらあせ》のにじむ日です。こういう日になると苦しかった体を思いおこし閉口です。七十八度ほどです。
ペンさんはかつらの島田をのっけて、かり着の紋付きをきてお嫁さんになるのだそうです。なかなか大変と同情します、当然そういう恰好をするものとぐるりできめている由。まあ一生にいく度もないのだから、それでケンカしてもいられないわけでしょう。旦那さんになる人は、何しろ福島市というようなところの日銀支店づめであったし、通俗的ととのった方らしいから、若手名士で、田舎で名士になったとき、必ずつきもののおきまり宴会で、あながち潔癖というのでもないのでしょう、おかみさんとのことだって大して、不動の選択というのでもなかったらしいから。別の友人に、結婚したものかどうかと、もうきまった筈のとき相談したと云って大分ヒンシュクを受けているらしいようですし。
女の人の側とし
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