とだ、という言葉は鼓舞的ですが、逆は真ならずだから、まさかに、失敗したということは、何かしたことだとは云えないわね。大笑いね。
 二日のお手紙二日おいて五日につき四日のはきのう着いたのですが、すこし御返事がおくれたについては、満更わるくもないニュースがあるの。
 文芸協会から――今の文学報国会――自選作品集を出します、いろんな人が一篇ずつ小説を出して。私は「今朝の雪」というのをのせます。『婦人朝日』に「雪の後」という題でかいたものです。やっと綴じ込みをかりて来て、うつしてもらって相当手を入れ、厚みのついた作品となり、短篇としては満足です。この間の手紙で、ぐみ頭[#「ぐみ頭」に傍点]につきいくらか歎息をおきかせしましたけれども、こういう思いがけない仕事で、現在の力でどんな風に仕事出来るかわかったし、小説をかいてゆく心持も柔かく重くなっていて決してわるくないし、うれしいのよ。この間一寸お目にかけたかしら、松屋のザラザラでうすくてペンがつかえないような原稿紙。あれに鉛筆で一行おきに写してもらってそれをなおしたのですが、悪いことばかりはないものなのね、松屋のあのひどい原稿紙だと鉛筆でかけるのよ
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