もひかれるような場合があるものではないでしょうか。
 ろくでもない養生ぶりについて患者は、自分の感受性を裏づけるだけの闘病の経験も知識もかけていて、したがって意力も十分ではなかったのだと思います。自分の気もちとして、何これで死んでいられるか、という思いばかりはげしくて。信用出来ない薬をいや応なしのまされるとき、ダラダラ出来るだけ口の端から流し出さしてしまおうとするように。それは不様です。たしかに人前に出せた恰好ではありません。でも、単なる気弱さからとばかりも云えないのではないでしょうか。副作用のきついものを、そのときはいさぎよいようにのんで、あとの一生をその毒でふらふらしているのも多いし。
 私の病気は本当に複合的におこって、しかもいろいろに変化しますから、どうか段々病気にかかりかたもその話しかたも、ちゃんと会得してゆきたいと願って居ります。
 今マリー・アントワネットの伝記をツワイクがかいたのをよんで居ります。蟻の這うようによんでいますが、マリア・テレサという女王は、自分の位置と義務とをよく知っていた点で女傑であり、明君であったようです。彼女は娘のアントワネットにくりかえしくりかえし
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