親父。若い人は石油の発掘専門の統制会社につとめています。姉たちは財閥の小番頭の又その番頭というようなところに嫁入っています。十三四とか部屋のある邸宅に今は若い連中だけいる由。花嫁は妹とともにその妹が嫁入る迄その家の掃除をしていなければならないから大変です。親戚に誰かかなり偉い司法関係の役人がいて(大臣級らしい。現役ではなく)、息子はそのおかげで就職万端どうやら形をつけてもらったらしい話です。若い人とつき合はありません。
今はペンさんに迎えをして貰っているだけですが、六月一杯でおやめのことにしてあります、忙しくもなるでしょうし。
女の気持は自分のことを考えてもいくらか推測がつきますから、その点はいくらか考えていたつもりです。
同じ病気とたたかうにしても、医者が自分の効能書をよく見せようと診断を重く重くともって行って、恢復する条件がないようにないようにとするようなひどい場合、患者はどうしたってその診断に服すまいという気がおこるものではないでしょうか。よほどちゃんと医書もよんで病気の条件とその養生法とを客観的に判断出来ないと、この医者にころされていられるものかという気から下らぬ売薬に目
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