、縫物の方はそれも出来ず人頼みの哀れさです。その上今年は秋になって私が起き出してから冬物を手入れしはじめるさわぎでしたから。
国府津行きのことは、私に関する色々の事情を考慮して行かないことに大体決めました。田舎は案外にきゅうくつな時代になっていますし。あちらはずっと管制の状態です。反《かえ》ってここでなんとか家のゴタゴタを受け流して、二階で日なたぼっこでもしていた方が、万事につけて安静の治療が続けられそうだということがわかりました。第一今のところではまだとても汽車には乗れませんし。こちらの家へ何とかして、もう少し人手があるようにして、私が呑気に二階にいられるようにすれば何とかやれるでしょう。十二日朝、寿江子は沓掛へ出かけ、家中は少しホッとしています。御本人もあちらでここの空気はいいと言っているでしょう。十六日、十七、十八日は休み続きなので、国男さんは太郎を連れ、若しかしたらば沓掛へ行きそうです。そしたら今年は休養祝日というわけで、十七日は今にも身のこぼれそうなああちゃんと二人で、のうのうとした小さい祝宴をはるつもりですが、今夜の様子ではどうなることやら、国ちゃんに何か野心が出来たらし
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