れをペンさんが居る内に書いてもらおうと思って、やっこらやっこら二階へ来たらば、きれいにした四角い台の上に思いもかけず菊の花が朝鮮壺に活かっていて、「まあ、きれいだ」と嬉しい声をあげました。寿江子がそちらの帰りに買ってきてくれていたのでした。この菊の花の下には、小さい徳利形の水差し(硯に水を入れるもの。水滴だわね)と一匹のひどく間抜けな顔をした水色の縞の熊が辷りそうに足をひろげています。このシャツの余り布で作られたような縞の熊は鼠が太ったような丸い耳ととんきょうな顔をしていて、私は縞の布で作った動物は好きでないからと寿江子さんが安心して袋から出したところを間抜面の故にすっかりひいきにして御愛物にしてしまいました。
 オリザビトンがこれから二ヵ月もあるというのは心強い話で、その内又ペンさんに三共あたりへ行ってみつけてもらってみましょう。あとから言った薬もみな内国製ですから、そう急になくなるということはないでしょうが、オリザビトンがなくなるとすればあやしいものですね。ただ後のはBとCと独立ですから、相当続くだろうと思いますが。調べておきましょう。多賀ちゃんのことは、また勤めたということは知り
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