んは本当にいくらか遅れるかも知れませんね。然し正月はこちらでさせてやりたいものです。私が外を歩けるのは来年の秋頃でしょうが、その頃までにどんなに世間は変っているでしょう? 去年の十二月から今日までに三段位に変ったそうですから。二年こもって暮すと仙人めいてしまいますね。でもね、世界を理解するという力は、あながちそれで苔が生えてもしまわないからいいけれど。では今日はこれでおしまい。マッサージの人が来ましたから。
十月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 藤島武二筆「ベラデスタの池」(一)[#「(一)」は縦中横]と「ベルサイユ」(二)[#「(二)」は縦中横]の絵はがき)〕
(一)[#「(一)」は縦中横]あーちゃんが二階上下することは、もう九ヵ月の体によくないので私が上に移りました。殆んど十一ヵ月振りでみる二階は、荒廃のあと著し、という工合です。ペンさんに手伝ってもらって、居る方の部屋だけどうやらまとめて臨時の机でこの葉書を書きます。家のように満足な体の人が居ないところは、めいめいが自分の体にかまけて、つまり一番普遍的に気のつく人間が病人になっていられないような可笑しい按ばい
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