、母さんが二人を置いては眠り不足で怖しいことになるから、その間は少くとも泰子は私の養女でしょう。ものも言えず、たてもせず、それでも優しさはわかって、この頃は人恋しがり、皆の声の聞えるところでないと淋しがったりするのは全くいじらしいものです。幸い美人だから邪険にされなくてまあまあです。
 カロッサの小説は、極く始めですが、大戦直後のドイツの真面目な心の諸問題を扱っていて面白いし、不幸をそういう形で経験し、表現し得た二十五年前を考えます。シュミット・ボンにもこの時代の作品で一寸特色のあるのがありました。ヤーコブという人の「ジャックリーヌと日本人」という小説は、インフレーション時代のベルリンと日本の震災時分を背景として動揺する中層の精神を描いて印象深くありました。スタンダールは読む人の成長につれて読み返される価値があり、作家とすれば、そのことがすでに一つの大きい価値ですね、私も読み返したいと思います。古行李をいじっていたら、新しい健康だわしが出ましたから、あれを使って益※[#二の字点、1−2−22]風邪を引くまいと思いますが、哀れなことには、うちのお風呂がこわれたのよ。そしてもう同じかまはな
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