。気にしています。

 十一月十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 ピサロー筆「春」の絵はがき)〕

 今、手紙の封をしたところへ六日附のお手紙頂きました。白水社の本のこと承知しました。夜具やタオル寝巻がお気に入ってその嬉しさは私一人ではありません。何しろ大した苦心をした人物がもう一人ここに控えているのだから。歯の金のことは調べます。全く、色変りの合金の歯などは歓迎でありませんから。注射について書いていて下すっているところが大分珍らしい御苦心のあとなので万々お気持がわかり全くそうよという気持です。静脈注射は看護婦では許されません。看護婦は皮下だけです。お風呂は石炭不足で一週に一度、しかも私はやっと、この頃たつ度に入るようになったばかしです。私の風呂好きがこの有様よ。シュトルムはおっしゃるとおりですから、ヘッセをみつけたいと思います。他に何があるか調べましょう。

 十一月十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

 十一月十三日
 十一日附のお手紙頂きました。先ず本の話しから。ヘッセのはとうとうありませんでした。シュミット・ボンの『老婆』というのをともかく
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