わしく「よくも飽かずと思っているくらいなら」という希望が語られていて、私も、リフレインは余りおさせしまいと思います。でも、決しておさせ申しませんなんかとは云わないでおくのよ。何故なら、余りきれいな挨拶をしすぎては、家庭的[#「家庭的」に傍点]でありませんから。ホラ又と云われるのも、云うのもわるくないところもあると思うの、勿論意義を軽く見てのわけではなくよ。更に、そのようにやろうと思わないしというのとは全く反対ですが。私は今年は勉強[#「勉強」に傍点]するのですから。仕事の質を深めてゆくのは勉強以外にナシ。このこといよいよ明白ナリと思っているのだから。ほんとの勉強のない作家はテムペラメントでだけ平たく横に動きがちです。明るさ、について実に深い教訓を与えられましたから。自然の気質の明るさなんか歴史の複雑な襞《ひだ》の前には、わるく行けばその日ぐらしの鼻唄となり、よく行って、せいぜい、落胆しない程度にそのものを保つだけで、決して真の人類史の明るさと一致した明るさは保てないことが実にまざまざとしたから。
 面白いでしょう、歴史の大転換の時代に、多くの人々が却って小市民風に何となし自分一人一人の
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