安寧、マアかつえない日々をよしとする気分におかれているようになるということは、政治の貧困の半面の時代的な心理ですね。大きい言葉が空中にとび散っているけれど、何となし人々の目は小さく身のまわりに配られています、様々な意味で。
 この正月はそういう気持が一般に著しくて妙な空虚でした。一応おめでたいみたいなのよどこもかしこも。だがお正月と共に万事お休みの感で、次に何が出て来るのか何だかこわいみたいなそんな変な新年の雰囲気でした。
『現代』で売切れのトップを御発見になったということ、あなたに珍しかったばかりか私にも大変珍しいことです。「現代の心をこめて」は、つけないでよかったのよ。羽仁五郎の「ミケルアンジェロ」のどこかにある言葉にごく似ているのがわかったから。現代の心のかぎりをこめて、というのですが、ミケルの方のは。三つの単語を並べた題というのはどうでしょう、ポツンとしていて、そして二昔前に割合はやった題のつけかたで与謝野晶子からいてうに「雲・草・人」というのなどあり。全く実質はちがうけれど。竹村のをまとめたらほんとに目次かきましょうね。でもまだ枚数不足と思うのですけれど。それに私とすると、評
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