でなくやっぱりあのスケッチどおりの室の様子で万両の枝をいけて、おそなえの日にやけた小僧のような色したのをかざっただけです。ボチボチかえるということになりました。
 そちらのよせ植えどんなかしら。今年も梅、南天、松、福寿草かしら。昨夕散歩に目白の通へ出たら、ボケの真紅の奇麗な鉢がありました。
 きょうは午後からその三人のひとたちとトランプでもして、休みのおしまいを遊びましょう。トランプもうちではお正月に出るだけね。
 昔札幌のバチェラー(アイヌ研究家イギリス人)のうちにいたとき、夜お婆さんがトランプの御対手をたのむのには閉口した覚えがあります。私は大体ああいう遊びごと大して好きでありません、何だかあきるわ。
 多賀ちゃん今年は一年ぶりで国のお正月で、きっとこっちでこしらえた着物着ておしゃれしているでしょうね。それを小母さんがうれしそうに見ていらっしゃるでしょうね。マアあちらもおだやかな新年でしょう。では明日ね。

 一月八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 一月八日  第二信
 やっぱり雪になりました、雪明りの部屋で書きます。ゆうべ夜なかに何だかひどい音がして目がさめ、寿江
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