与えた人の一人ですから。このひとの死が、初めて私につよい衝動を与えた記憶もまざまざとしています。このひとの亡くなったときは私は小学の一年ぐらいだったかしら。青山まで雨の中を俥で行って長くて眠たかった覚えがあります。
本当にあっちはもう雪ね。雨と雪とが毎日降ります。そして、十二月一杯曇天つづきで(十月下旬から)一月に入ると厳寒で却って白雪はキラキラ燦《かがや》いた青空になるのよ。午後三時ごろにはもう電燈がついて。ガローシの底でキシキシいう雪の音を思い出します。馬の毛の汗がすっかり霜になって白くなっているのを思い出します。雪の街独特な一種のなつかしい生活慾をそそられる冬の匂いを思い出します。私は雪のああいう景色や気分が実にすきよ。白樺薪の煙は実に黒くて、その煙が雪につつまれた昔風な塗色の建物の並んだところから空へと勢よく立ちのぼっているところも、親愛よ。
今年の冬は忘れがたき雪景色でしょう。
まるでちがうけれども、ここにユトリロの書いた雪ばれの絵のハガキがあります。雪をよろこぶ心がいくらか出ています。刷りがわるくて台なしだけれど。
ユトリロとしては心情的な作品ね。
岡本太郎の個展
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