棒づよくきいて下さらなくてはならないわけもありそうです。だって、知っていらっしゃること? あなたよ、初めてあの蜜入りを私におたべさせになったのは。人間の味うものの範囲も考えてみればひろいと感服いたします。
私は今自分のまわりに浮んで来るいろいろの情景の中にいて、何かおとなしい小さい声で物を云っていたいのに、ピアノは何てせわしくうるさく鳴っていることでしょう。あなたもうるさくて? 今何にもあんなに鳴るものなんか欲しくないのに。ねえ。
困った心持になって凝っとしていたら、ふっとやんだわ。暫くこうしていて間もなくねてしまおうと思うの。
子供は、早くあしたになればいいと思うとき、早くねてしっかり目をつぶって、あしたが早く来るようにするでしょう。自分のいたい世界だけになるようにするでしょう。それとおんなじよ。
九月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
九月二十二日 第四十一信
けさはがっかりいたしました、と云ってもうかつなのは私だったのですけれど。火曜日はお休みと気がついたのが九時なのよ。さあ、とあわてて仕度して出かけたってついたのは十一時すこし前。二百十何番
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