の人がいいという人柄で、珍しく縫いものもすきでやっています。縫物が好き、というような人は珍しいのよ。常識的家政学からいうと、派出のひとを今置いておくなんて狂気の沙汰ですが、私は仰言るように背水の陣をしいて筑摩の仕事をしようと思うので、そのためにはやはりいて貰わなくてはなりません。家をあけて、どこかへ行ってしまうことも出来ず。いつものことながら暮しの形はむずかしいので閉口です。菅野さん母子も満州にいる父さんからもし為替が不通になった場合、義兄さんが扶助するのでしょうし、こっちと一緒にグラグラでは困るし。この頃は食料の買い出しだけで一人分の仕事よ。朝のうちパンの切符をとり魚やを見て予約しておいて、午後パンを買いにゆき、八百屋の切符とっておいて次の日買うという有様で、お菓子でもすこしたべようと思えば一日じゅう一人は歩きまわっていなくてはならないことになります。だからうちなんかいつもうまい買物はのがしつづけです。何しろこの間はそちらのかえりに、あの界隈で古ショウガを三銭買って来て大威張りという有様です。思いもかけず、米沢の方から一箱胡瓜、ナスを貰って大ホクホクという有様だったり。
郡山へは必
前へ
次へ
全471ページ中338ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング