トをとったりという次第です。
 友ちゃんももう会えないものとあきらめていたところを思いがけなかったので、本当にうれしそうです。私たちと感情表現がちがうのねえ。きょうなんか全くおどろいてしまった。だって、まあ! ともあら! とも電話口でどんな表現もしないのですものねえ。それで、しんからうれしさで動顛しているのですものねえ。こういう人たちの感情って十分思いやってやらなければいけないのだと思います。お母さんなんかは真率にお現しになるのだけれど。よう電話かけられてじゃのう、よかったとすぐおっしゃったのよ。友ちゃん、はっとして言葉も出ないというところ、いじらしいみたいです。ねえ? それミーのじゃろなどと姉さんと云っている、しかし何たる大和撫子でしょう。そんなことも可憐よ、いろいろと、ね。〔略〕
 もうそろそろ四時ね。広島へおつきになるわ。相生橋のそばに宿がありますから、この前のように郊外へ行くのでなくていいでしょう、その近所にお母さんのもとお泊りになったという宿屋もあるから。
 さて、ここで事態は一変いたしました。夜九時半頃、お湯に入りに来た河村さんたちもかえって、私は店をしめ、戸じまりをして二
前へ 次へ
全471ページ中293ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング