うのよ。手間をかけてもね。前のようなモラルは、極めて一般的であって、それは私でないAでもBにでも特長のないものの道理の当然であってね。
 生活のなかに美しさを多くもってゆくということ。そして、美しいものを、自分がながめるときの様子を、わきで見たらどんなかしらと思いました。美しいものをみる視線は不躾けでないということは味の深いことね。美しいものに対して私たちはごくつつましい眼つきを与えるか、さもなければその堰《せき》をのりこえて全傾注を面に現して、その美しさの裡に没入してゆくしかないのね。美しいものの上に視線を凝せばおのずから表情も変って、美しさはそれを見ているひとの面に映り栄えます。いろいろの場面で、自由にそういう美しさのうつっている顔をして暮したら、現代の人間の顔だちは一般にもっと気高くて情感的でしょうね。しみじみそういうことを感じながら歩きました。感動し得る、という感銘をうける顔さえ少いのですものね。何かそういうものとはまるでちがった日常の打算だの何かで面《メン》をつけたようなツラをしていて。それは人間の顔ではない、でも人間の顔だというところにバルザックの世界はあるのだわ。美しいも
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