物に行って、そこの住居人の子供が名所エハガキを売るようにそこのエハガキを売りつけるのを見て、一種の感想をもちました。そして、やはりその感じの当っていたこと、そんなにして小遣稼ぎをする子供らの生活が語っている実相がその真の向上の方向には向けられていなかったことがまざまざと分り、実に面白うございました。
 一九二九年の五月はワルシャワでね、その朝の光景なんかいつか書きましたねえ。みんな目に見えるようで、従って、実に会得するところ大[#「大」に「ママ」の注記]かったわけです。
 それにつれて、あなたが(武麟評して大|伽藍《がらん》のような構成だと云った)文芸講演会のトピックの意味も、くりかえし思い出されました。何日かをぶっとおしに当てるという方法が一番有益ね。この間のは菊版で四百何十頁か。二日殆ど食べる間だけ休んでよみました。本をもっては国府津でよめたりしたらいいのにね。益※[#二の字点、1−2−22]そんなことは実現おぼつかないことになります、切符の関係で。
 甘やかすと為にならないのは天下の通則ながら、私は、しかし甘やかされすぎたということが、いつかあったのかしら。
 動坂で、松林の模様
前へ 次へ
全471ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング