たちの生活の条件から保たれている健全さというものが、どの位貴重なものか、それが生活や芸術の成長にどんなものとなっているか。それが有ると無いということで、何だかごく近い友達たちとの生活感情との間にさえ近頃は何か変化を生じて来ているようでさえあるという事実を、私は決して軽く見てはいないと思います。この後二三年も経ったら、どういうひらきを生じるのだろうと思うことさえあるわ。
主観的肯定に陥る危険について自分で深く考える理由の一つとしては、逆にそういうことから、狭い自己肯定になってはならない――文学上のこととしてはリアリティーが弱まってはいけない、と思いもするわけです。
私には云ってみれば、慈悲の鬼がついているのだから、なかなかのびが戻らぬという有様でもいられないわけです。ここにあげられている四つの条項は、これは常に変らない自省の土台となるべき点であることはよくわかります。温泉や旅行は云々と老後が結びつけられていること、何か頬笑まれました。だって、私は老後というものをそういう条件であらわれ得る歴史の性質でないとばかり思っていたから。何だか珍しい珍しい気がして面白かったの。自分たちを、じいさ
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