感じです、正直のところ。お金があると買うものって大体自分の体のまわり、家の中のもの、とはじまるのが通例と見えるのね、鶴さんどこか通《ツー》な店の帽子のお初をちょいと頭にのせ、稲ちゃんに阿波屋の見事な草履買ってやって、時計買ってやって、なかなかいい正月というわけの顔つきでした。品物にでもしておくのがいいわ全く。
今年は年越ソバがないので(出前をさせないのです、ソバ組合のキヤクで、大晦日にかぎり。ソバ粉の値上りを見越して、配給をひかえている由)支那ソバの年越しをいたしました。おばあちゃんは八十二歳です、二十九日三十日と箱根へ一家で一泊に行って、おばあちゃんは極楽だったそうです。タア坊にエリ巻の可愛いの、健ちゃんには文具。それが私のおくりもの。
四時頃うちへかえり、お風呂に入り、それからねて、おひるにお祝いをいたしました。去年のお雑煮ばしの袋のような奇麗なのはなくて、白い紙に赤で縁どりが出来ていて、鶴まがいの字で寿[#「寿」はゴシック体]とかいてある、それに先ずあなたのお名をかき、自分をかき、寿江とかき、恭子とかいた次第です。
三十一日まで私はパタパタだったから元旦、二日のうのうして、
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