と。
喋っていて、十時すぎたら、玄関の格子がガラガラとあいて「はっちゃんだヨ」と、小さい妹さん、仁平治さん、赤ちゃんの一隊が、やって来ました。小豆島の姉さんに会うために。大した同勢でしょう?
井汲卓一氏が理研の重役で、支満へ旅行して天然痘になったということで皆びっくりしてさわいで(手も足も出ず)種痘したりしたという年の暮です。熊ケ谷の農学校の英語の先生一家は二日に種痘をしようということで、私は余り人員超過になったから、引上げて稲ちゃんのところへゆきました。
稲ちゃんは三十日の夜十時すぎ蓼科からかえって来た由。買物からかえったばかりとコート着て長火鉢のところにいます、眼をクシャクシャに細めているの、痛いと。何だろう、この夏の私のようなのかしらと思ったら、考えた末、白い雪の反射をうけすぎていると判断しました。ひろいところに雪が白《はく》皚々《がいがい》でしょう? それを白い障子のたった明るい室で見て、白い紙の字をよんだり書いたりする毎日だもの! ほんとにめくらになります、リンゴのすったのでひやすことを教えました。
ここでもいろんな買物の陳列でね、何だかいろいろ面白いような妙のような
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