たとえば、うまい、というのではないが、「新しい船出」について云っていて下さる点など、ね。
 刻みということ、(文学の)面白いことね。この頃の世情の荒っぽさは刻みのこまかいものをまどろこしいとするのよ。だからうまくなった作家は立体的に刻みこんでゆかず、つい横に流れ出すのよ。そして、テーマもそのように扱われがちになる危険があります。
 それから、私は大変深い興味で感じたことは、あなたは「広場」「おもかげ」を比較的完成したものとして内容も十分よみとって下さいました。そういう人もあったけれど(他に。そして美しい作品とした人も)なかには、あすこで語り切れなかったことを全然わからなくて、わからない、と云った批評家もありました。それも、外的条件にしばられた一つのことであるが、又、読む人が小説というものに対する気持も、お楽なのね。(マア、こんな風になって来たわ、ガタガタよ)
 二日のお手紙で、感じたことをためておくのは面倒だからと仰云ることよくわかっています、それはもうそろそろ分っていい頃ではないの、もうやがて十年めよ、私たちの生活は。来年で十年よ。
 作家としてリアリティーへの追究が生涯を通じたもの
前へ 次へ
全471ページ中145ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング