し原形のまま出ていたならそれを種として、必ず波が立ったのですから。そうすると、これからずっと様々の曲折を営んでゆく上に途が切れてしまう結果になったでしょう。芥川の小説の「極楽」というの覚えていらっしゃるでしょう? 一縷の糸につながって極楽へゆくという話。極楽ではないにきまっているけれども一縷の糸もなきにはまさります、その一縷の糸にいろんな名の人がつながって極楽へ行けた云いつたえを信ずればね。仏様はきっと臆病ではないでしょうね。しかし、現実の糸のもちてはまことに兢々たるものですから。一縷の糸に一度シャッキリ鋏が入れられでもすると、もう糸を切られたと絶望して、もっていた手を諦めてはなしてしまいますから。その糸をいかに巧にかしこく手ぐるかというところに蜘蛛の智慧がひそむわけです。蜘蛛は、アナキネという乙女の化身ですって。アナキネは大変織物が上手で、その美しい織物の技術に、或るギリシャの神が魅せられたのを、その男神の恋人が嫉妬して呪詛で蜘蛛にしてしまったのですって。可哀そうね。
具体的ないろいろのことが大変複雑でむずかしいので全く閉口です。毎日そのことを研究中です。只今のところ名案皆無です。
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