。「波瀾ある世代」これはいいわ、きめていいでしょう?
三日のお手紙頂きました。三十日のはいよいよ不着です。どうしたのでしょう。そんなにあなたの手紙の好物なネズミってあるでしょうか。私は気にかかるのよ。もしそちらを出ていないのならそれでいいのですが。
おかぜいかがでしょう(これは五日の朝かいているところ)今朝の雪は貧相ね。こんな貧相な雪って。まるで地面へ塩をひとつまみこぼしたようでした。大丈夫? しゃんと雨がふればいいのにねえ。そしたらかぜのためにいいのに。
三省堂の辞典のことはきのうお話ししたとおり。支払表その他謄写料というのは重複した部分だったのでしょうか、お会いして伺ってから。又、ピントがちがったのをゴタゴタ書くといけないから。
私のかぜは追々にましです。この間うち顔がすっかりあれて、ピシピシと顔の皮がむけて、夜などかゆくてこまりました。もうそれも大丈夫。ヴィタミン半年はあなたらしいと笑えました。そんなに私の方はヴィタミンを気にしないでもいいでしょう、そちらよりは食物からとれますから、まだ。しかし来月からお米は配給で、本当に寿江子だって袋へお米いれて来なくてはならないわ、もしうちでたべたいなら。一人分一日三度お米は食べられないのです。これ迄日本人は米をたべすぎて胃カク張になったり脚気になったり頭脳鈍重になったりしていたという人もあるけれど、それはほかにもっと優良な食物があっての上の話でね。パンにチーズをつけてたべられる人々の生活からの話です。お魚のひどさ話のほか。菓子屋のガラス棚は全くカラで、この頃は菓子の中村屋で佃煮とのりを売って居ります。千円札が出るというような巷の噂が新聞に出ていましたが、それはおやめになったそうです。
ヴィタミンのほかの利く薬は、この頃服用法が段々のみこめて来て、オヴラートのつつみかたうまくなり気のもめることがへりました。ですからきっと益※[#二の字点、1−2−22]効果は良好でしょうと思います。
「花の叫び」の詩話。あったかくてよく合った手袋の童話。どれもやっぱり面白いことね。
文学における大陸性のこと、又チャイコフスキーのこと。これについて云われていることをくりかえしよみ、こういう問題にふれてかく場合には、いつもその一つ一つの文章に必ず土台となる理解のキイは示しておかなければならないものであるということを学びました。ほかの
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